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現役英語教師に聞く② 子どもにとって、英語好きになるよりもっと大切なこととは?

ICTイングリッシュラボでは、スクールでの指導内容に偏りが生じないよう、教員や外部講師によるアドバイスを取り入れています。

浜松市内の私立中学校・高校にて英語を教えているShodai先生は、アメリカの大学で言語習得について学び、日本の大学院で英語教育を研究しました。ICTイングリッシュラボのホームページでは、その知識をシェアしていただたくべく、教員目線でのコラム記事を連載をしていただいています。

前回は子どもが英語好きになるきっかけ、英語嫌いになるきっかけについて話してくださいました。今回は子どもが英語好きになる必要はあるのかについて、また英語の必要性をどのように子ども達に教えているのか聞かせてくださいます。

前回の記事:現役英語教師に聞く① 子どもが英語好きになるきっかけ、嫌いになるきっかけ


英語が好きになる必要あるのか

前回、「英語好き」について語りましたが、今回はその逆とも考えられるテーマで話させていただきたいと思います。そもそも、英語は「絶対好き」である必要があるのでしょうか。

もちろん、好きな方が子供にとっては抵抗感がなくなり、自然と英語を使う挑戦をしたり、日常でふと英語を意識することが多くなったりする可能性が高いでしょう。ですから好きな方が良いとは思います。

しかし、私は必ずしも全員が英語を好きである必要はないと思っています。

大事なことは何?

そんなことを踏まえながら、ではどうすれば良いのか考えてみます。

私は、「英語を学ぶ目的」さえ理解していれば良いと考えています。ここでいう「理解」は「心から理解すること」を指しています。表面的に理解することはおそらく全ての子供達にさせることが容易ですし、おそらくもうしています。「嫌だな」「やりたくないな」と思っていたとしても、「でも、やらなきゃ」と思わせる必要があるわけですから、「心から理解する」と言うことが非常に大切です。

「必要性を心から理解する」ことは英語に関わらず、教育に関わる全てのことに繋がります。そして、これを考えることは、大人にとっても大切なことだと思います。なぜなら、大人は固定概念や慣例や経験から物を言ってしまうことが多々あるからです。「なんで勉強しなければならないの?」という問いに対して「大切だから」「立派な大人になるため」「やるのが当然だから」などと答える方もいらっしゃるかと思います。

それが正しいことは大人であれば誰でも分かりますが、子供にとってはそのイメージがつかないので、子供に与える答えとしては相応しくないと思います。

ですが、大人が本当の意味での「なぜ」を理解していれば、子供をその気にさせる道しるべにもなるでしょうし、もしかしたら逆に、答えがわからないものに関しては無駄だったことに気づき、それをそぎ落とすことで効率化を図ることもできるかもしれません。

新年度に話すこと

生徒達にやる気を出させるために、新年度の授業で必ず話すことがあります。

「英語は楽しそう」と思わせるのではなく「だから勉強するのか!」と思わせるためです。ただ、その話し方・内容については少し工夫しています。では、どんなことを話しているのでしょうか。

「大切だから」などの話はしません。そんな分かりきった話をしても子供は面白くないからです。

私がよく話すのは「英語が出来て得したこと」です。これは英語で生活したバックグラウンドがあるからこそ話せることですが、大切にしたいのは、子供達に身近なトピックを選んだり、子供達がイメージしやすい内容であることです。例えば、英語を知っているおかげで「お金を節約できた」「友達ができた」などといった身近に感じられそうな話をいくつか話します。そのどれか一つに子供達が惹きつけられたら良いと思っています。その惹きつけられたものから「じゃあ、英語勉強しておいた方がいいな」と思ってもらえたら成功です。

ただし、それと同時に現実も突きつけます。英語は一朝一夕で力がつくものではありません。「英語のテストで点を取る」だけの目的だったら可能かもしれませんが…。

具体的には、英語をマスターするのにどれくらいの時間がかかるのかという話をします。それは気が遠くなるほどの時間です。しかし、少しでも練習すること(例えば習った項目を音読するなど)が、その到達するまでの時間を縮めるんだということも教え、日々の練習がいかに大切かということも話をします。

ズルいかもしれませんが、「やってもやってもできないじゃん」となるときの伏線を張っておくようなイメージでしょうか。英語はコツコツ練習することが大切で、途中でやめてしまっては元も子もありません。ただ、やめずにコツコツ積み重ねれば花開くときが必ずきます。

目的を理解することの大切

繰り返しになりますが、やはり英語を学ぶ目的を理解してもらうことは大切だと思います。私の指導においても、いつものようにこのことについて子供達に話しています。

話すというよりかは、目的を一緒に考えるという手法かもしれません。「掃除をしなさい」「挨拶をしなさい」「明日の予定を書きなさい」と子供に指示するよりも、「なぜ掃除をするのだろう」「なぜ挨拶をするのだろう」「なぜ明日の予定を書くのだろう」と問いかけた方が、経験上良い傾向にあります。

どんな手法を取り入れるかは子供達の発達段階や実態などによって異なるとは思いますが、何れにしても子供達自身が理解することが必要です。少し、話は逸れてしまいましたが、英語を勉強することの目的を考えることは様々な分野で応用することができるということです。

ですから、私の指導においては無理して英語好きになってもらうというよりは、英語を学ぶ目的を理解してもらうことを意識しています。英語を含め、さまざまな分野において目的を考えさせることが、子供のためになることだと考えているからです。


次回の連載記事では、近年変化する学校教育に対してどのようなアプローチで対応しているか、Shodai先生にお話ししていただきます。お楽しみに。

B!

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